『共有』




また御幸先輩に逃げられた。

夜、少しだけ球筋を見て貰おうと御幸の部屋を訪ねたんだけど。
いねぇし。


いつになってもあの人は、自己中で、自分の気が乗らないと俺の球なんて受けてくれないんだろ。

そりゃ、疲れてるときに付き合わすのは悪いって俺も思うけど。

「あー…もうっ!」
思い通りにいかずイライラする。
自分の部屋に戻るなりつい口に出すと、俺をジっと見る倉持先輩。

「こっちまでイラつくから、ストレス持ちこんでくんなよ」
「…すいませんー」
「謝る気ねぇだろ」
ため息をついた倉持先輩はベッドに寝転がる俺にいきなり跨る。

「なにイラついてんの」
上から見下ろされて。
恰好はおかしいけど、気にしてくれてんのか。
「…御幸がいなくて」
「…なに御幸求めてんだ」
御幸求めて…って。
しまった。
言い方おかしかったか。
「ちょっと投球練習しようと思っただけで…っ。クリス先輩はトレーニングでいないし、部活時間外に付き合わせるのは悪いし」

そこまで言うと倉持先輩は笑みをもらして、いきなり俺の股間を掴みあげる。
「なっ! なにしてんすかっ」
「いや、てっきり欲求不満でイラついてて、だから御幸求めてんのかなって」

「んなわけねぇし…っ」
…思えば欲求不満は否定できねぇけど。

確認するように何度か倉持先輩がそこを揉みしだく。
「…っ! 離し…っ」
「勃ちそう?」
なんてこと…!

「違っ」
「御幸とはもうしたんだろ」
否定の言葉をかきけされる。
御幸先輩と?

確かにこう手でしごかれてってのはある。

「なんで…知って…」
「…あぁ。お前が馬鹿だから、いま知った」
「へ…?」
「かまかけただけだっての。けど、ホント、したんだ…?」
俺の弱味を掴んだみたく悪魔の笑顔。
遊んでいた手を、スルリと下着の中まで潜り込ませる。
「なぁあっ!」
「で。どこまでしたわけ」
いや、冷静に話してる場合じゃないですから。
直接握られて擦られたらそれどころじゃないでしょう。

「ちょ…っとしかっ」
「ちょっと…ね」
「んっ…増子先輩が…っ」
いまは見当たらないけど、いつ戻るかわからない。
そう思ったのに。
「それなら、今日は御幸と部屋交換してるから」
あっさりと、なんかすごいこと言いました…?
「じゃ、御幸が…っ?」
「探してたんだろ。よかったじゃん。もうすぐ来る」
困るだろ。
こんな状態で。
「んっ…ぅんっ…離し…っ」
「おー…ぬるぬるしてきたし。お前、そうとう溜ってんだ?」

恥ずかしいのに、我慢出来そうにない。
「んっ…んーっ…くっ…んぅんんっ!!」

倉持先輩の手でしごかれて、そのままイってしまう。
頭がぼーっとしていた。
出しちゃって、やばいとは思ってるんだけど。

「…取り込み中?」
上からかかる声に目を向けると、立ってベッドを見下ろす御幸。

「な…あ…っ」
「勝手に入ってくんなよなー」
「一応、ノックしたんだけど、返事なかったし」
「なかったら入らなくね?」
二人の会話に入れないんですけど。

「どこまで?」
「あー。いまちょうど一回イったとこ」
「こいつ早いだろ」
「イきそうになると腰揺らしてくんのな」
「あぁああっ! もう、なんすか、二人してっ」
俺の恥ずかしい情報を…っ!

倉持先輩はやっと俺の下着から手を引き抜く。

二人は俺を見て企むよう笑った。

御幸が、倉持先輩の手を取りじっと眺める。
俺の出したモノが…。
「沢村、やばいだろ、この濃度。どんだけ溜めてんの」
「ヒャハ☆味見する?」

二人が倉持先輩の手についたそれにあろうことか舌を這わそうとするもんだから、慌てて先輩の腕を取る。
「なに考えてんすかっ」
楽しむようケラケラと笑われ、からかわれたのだと気付いた。

ああもう最悪だ。

泣けてくる。

「なんで二人はそう俺を苛めるんすかね」
ぼやく俺を見てか、またもや楽しむよう笑う声。
反発してなにか言ってやろうと思ったのに。

「「好きだから」」

2人の声が重なって、俺は言葉を失う。



…好き?

好きだからって、俺が?

……いや違う、虐めるのが…か。

なに勘違いしてんだ、俺。

顔が熱くなる。


「…っ性格悪いっすね」

「好きなやつほど虐めたいって言うだろー」

「そうそう、それ」
御幸は倉持先輩の言葉に頷いて同意を示していた。

好きなやつほどって。

「あの……虐めるのが好きなんすよね?」

倉持先輩がそう言う俺のほっぺたを思いっきりつねる。
「痛っ!」
「うわー、こいつバカだし。人の告白、スルーしてやがるし」
「沢村がそういうやつだって、わかって惚れてんだろ」

というか、普通、告白ってそんなサラっとするもんじゃねぇだろ。

わかりにくいし。

「どういう意味で…」

聞かない方がよかったか。
2人はまたにやりと笑みを見せる。

「たっぷり教えてやるよ」
からかってるんすか。

その夜、俺はその意味を嫌というくらいたっぷりと教わった。