『理由』




「じゃあまず、身辺チェックを」
 結構、無表情。
 ローテンションのまま、俺を見て、エイトはそう告げる。
「…はい?」
 そう聞き返さず得ないだろ?

「なにそれ」
「だから。今後、一緒に来るわけだろう? お互いの事、よく知っておいた方がいいし」
 それは分かる。
「で?」
「ぶっちゃけたところ、まだ信用出来ないから」
 なんてことを言うんだ。
 助けてやったのに?  

 そりゃ、俺だっていきなり知り合った奴といきなり旅に…なんてごめんだけれど?
 信用されないのだってしょうがないとは思う。

 で、いきなり身辺チェックって?
「なにをすればいいんだ? 俺の身の回りの事でも話せばいいわけ? 見ての通りだぜ? ココには味方より敵の方が多いね」
 エイトは、ひとつため息をついて。
「…わかった。とりあえず宿を取ろう。話はそれからに」

 どんな話があるのかはわかんねぇけど。
 ついて行くしかないだろう。
 俺らは、ドニの町へと足を運んだ。



 宿を取り、ゼシカやヤンガスがベッドに寝転がる中、エイトの視線が突き刺さる。
 さっきの。
 身辺チェックとかいうやつの続きだろ?
 まぁ、それほど眠いというわけでもない。
 むしろ。
 考えることが多すぎて、眠れそうにない。
 
「なにが知りたいんだ?」
 あえて自分からそう言って。
 エイトの座り込むベッドへと、俺も腰を降ろした。



 バンダナを外したエイトは、昼間とはだいぶ雰囲気が違った。
 少し威厳があるような感じ。  
一応、メンバーを取り仕切っているだけあるのだろう。  
まあ、あの王とか言ってるやつは除いて。

「…じゃあ、とりあえず、味見を」
 味見?
 疑問符が浮かぶ中、エイトが俺の体をベッドに押し倒す。
「……味見って…っ」
 ズボンの上から、エイトの手が股間のあたりを撫で回して。
 本気かよ…?
 おとなしそうな顔してるくせに…。
 結構、手馴れてる感じがしないでもない。
「…ゼシカや…ヤンガスにも、こういうこと…」
 いや、さすがにヤンガスはいただけないな…と自分で言っておきながらも想像をかき消す。
「してないな」
 意外な答え。
 こんな、会ったばかりの俺を押し倒すくらいだし。
 ゼシカのプロポーションからして、手を出したくなる気持ちはわからないでもない。  

「して…ないって…」
「意外?」
 エイトの第一印象からはまったく想像出来ないけれど。
 今、こうやって俺を押し倒す姿はなんとも…。
 そういうこと、しない方がおかしいっつーか。  

「……エイト…結構、慣れてたりするわけ…?」
「さぁ?」
 あくまで自分のことはそれほど明かさずに。
 俺の方が一方的に知られるみたいで、なんか気に食わない気がしないでもないんですけど。

 エイトの手が、淡々と俺の上着を脱がしていく。
 抵抗とかするのも、無駄に意識し過ぎてる感じがしてなんだか微妙だし。
 俺は、なすがまま。

 指先が、露わになった肌に残っている傷跡をなぞる。

「…痛々しいな…」
 そっと。
 俺の顔も見ずにそう言った。
「あぁ。そう思うなら、寝かせてくれ」
 別に、寝たいわけではないけれど。

 ベッドに座る俺の前。
 跪いて、じっくりと、嘗め回すように俺の体を見つめる。
「おいおい…。そんなに…」
 じっくり見てどうすんだよ。
 そう言い掛けたんだが。
 エイトが、不意打ちに近い勢いで、俺の胸元に舌を這わすもんだから。
 
 言葉が続かない。  
 
胸元をさまよった舌先が、ゆっくりと腹へ。
 くすぐったいような感覚。
 少し身を捩る俺を無視するようにして、エイトはズボンに手をかけ、チャックを下ろしてしまう。

「…マジかよ…」
 軽く、股間のモノにキスでもするかのような仕草。
 すぐさま、舌先が、俺のをなぞっていく。
「…っ…」
 
 本気…だったりするんだろうか。
 こいつ。
 やっぱり慣れてるんじゃねぇのか。
 こんな、ためらいもなく男のモノに舌這わしやがるし。

 丹念に舐めあげられれば、その気がなくても、硬くなってきちまうわけで。
 まあ、その気がないっつーか、その気になっちまうっつーか。

「ん…っ…エイト…」  

 夜だというのにドニの町は賑わしい。
 それでも、舌が這う水音が頭に響く。

 エイトが俺の両足を、ベッドの上へと持ち上げて、開脚状態にさせられてしまう。
「ゃめ…っ」
 やめるはずもない。
 俺の股間のモノを咥え込んで舌先を絡めてくる。
「んっ…んぅっ」
 引き剥がそうとエイトの髪に絡めた指先はまったくもって無駄というか。
 力がうまく入らない。
「はぁっ…エイト…」
 下から見上げるように、エイトの視線が突き刺さる。
「…な…に…」
 俺のから口を離して、指先を舐め上げて。

「な…っ」
 そっと、足の付け根、奥の蕾を撫でるようにしてから、一気に指を押し入れる。
「あっ…んーっ」
 涙が出そうな感覚。
 必死に手で口を抑え声を殺した。
 だけれど、エイトの指が中で蠢くたびに、声が洩れそうになる。
「ぁっ…んっ…んぅっ…」
 なんて声出してんだ。
 そうは思うけど、止まんねぇって…。
 エイトに肩を押されるようにして、ベッドへと体を横にする。
「はぁっ…あっ…んぅっ…」

 初めは、なんでこんなんするんだろうとか。
 まぁ、1回くらい別にかまわないかとか。
 あまり深く考えてなかったけど。

 なんか、そんな真面目に俺のこと見て、こんな風にするやつ相手にしたことないっつーか。
 表情をすっげぇ覗われてる感じで、恥ずかしさから顔を逸らす。
「ぁっあっ…んぅっ…はぁっ」
 抜き差しされる指に合わせてつい声が出てしまって。  

 体中が熱くなってくると、こういった行為をしている理由なんてものはどうでもよくなってくる。

「エイ…トっんっ…ぁあっ…」
 中を散々掻き回した指が引き抜かれると、休むまもなく引き換えに、エイトのモノが挿入されていく。
「ひぁっ…んっ…」

 ゆっくりとした速度で、奥まで入り込んでいく。
 頭がボーっとして、考えること、放棄してやがる。

 ただもう。
 気持ちよけりゃいっか…。なんつってさ。

「あっ…ん…」
 奥まで入って一息ついて。
 なんで、こんなんしてるんだっけとか、マジで思えてくるし。

 そんな俺とは違って、エイトがやたら、ジっと俺を見下ろしてきやがる。
「な…んだよ…。無駄に入り安いとか、緩いとか? そりゃ、やられ慣れてるから? じゃなきゃ、こんなやすやす、イキナリ出会ったお前とも、わけわかんねぇ理由でやり出したりしねぇっての」
 つい毒を吐く。
 だってそうだろ。

「別に…。そんな風に思ってない。理由なんてただの言い訳だし。ただ、もっとククールの事、知りたいって思うのは、嘘じゃないけど」

 なに言ってるんだか。
「知りたいって…? やりてぇだけじゃねぇの?」
「好きだと思う人と、やりたいって思って悪いわけ?」
「…なに…それ…。好きとか…」
 俺がまだ、言い足りないのに。
 エイトがそっと奥まで入り込んだモノをゆっくりと退かせ、内壁を擦る。
「ぁあっ…んぅンっ」
 ずるいだろ…、それ。
 こんなんされた状態じゃ、なにも言い返せそうにない。
 腰をスライドされるたびに、濡れた音が響いて、体中が熱くなってきていた。

「はぁ…っ…ぁあっんっ…」
「なぁ…。あんまり、自分のこと、悪く言うなよ…」
 なんだよ…。
 だって、ホントだろ。
 やられ慣れてるかもしんねぇし、無駄に入りやすいかもしんねぇし。
「俺は…ククールみたいな人、すごく好きだから」

 いきなり。
 なに言ってんだろうこいつは。
 そりゃ、女から好きだとか言われたこととか、自慢じゃないが結構あるよ。
 
 だけど、みんな表面しか見てない気がして。
 それで、俺もまぁ、浮かれたときもあるけど、どうでもよくて。  

 お前は、俺のなにを見て、そう好きだって言えるわけ…?
「そんなんっあっ…知らねぇくせに…っ」
 そう言うと、少し俺に対して呆れたみたいに、軽く笑う。
「だから…知りたいと思うんだろう…?」
 それが当たり前であるかのように、そう俺の耳元で囁いて、キスをして。  

 腰を動かす速度をあげる。
「ぁあっ…あっ…んっ…」
「その声…。他のやつらに聞かれるのは悔しいかもな…」
 苦笑いして、目線を隣のベッドへと向ける。

 長旅の疲れで、起きそうにはないが、ゼシカとヤンガスが同じ部屋にいた。
 俺はまた、手で口を覆う。
「はぁっんっ…んぅっ…」
「…どうも」
 別に、お前のためじゃないし。
 だけど、そんなこといちいち言ってる場合じゃない。  

 エイトの指が、俺の髪を絡めとる。
 首筋にキスをして、耳元に舌を這わして。
 
 こんなゾクゾクするような愛撫、されたことねぇかも。
「んっあっ…ぅんっ…ンっんっ…やっあっ…もぉっ」
「いいよ…イって…見せて…?」
 もう、口とか抑えてらんないし。
「ぁあっあっ…エイトぉっあっ…あっあぁあああっっ」  

 女みたいな声をあげて、恥も捨てて、欲望を吐き出していた。
 しばし放心状態。

 こんなわけわかんねぇ形でやり始めたのに、悪い気はしなかった。
 なんつーか、後味イイっつーか…。

「エイト…」
 声をかける俺の頬に、そっとキスをする。

「エイト…。俺が、信用出来ないんだろう…?」
 ぐったりとした状態でそう問う。
「…仲間としては、そんな風に疑ったりはしてないよ。ただ、君はモテるから。いつだって浮気しそうだ」
 
 俺の髪を撫でながら。
 こんな内容を真面目に話してくるし。
「なんだよ、浮気って」
「俺のことは、本気になるだろう?」
 なんの自信があるんだか。

 だけど、こうもはっきりと、態度で示されたら悪い気はしない。

「どうだろうな」
 軽く笑いながら、そう答えておいた。
 
 エイトは俺の腕を取り、体を起こさせると、また不意打ちみたいにキスをして。
「いずれなるさ。これから、ずっと、一緒だからな」

 少し、自信に満ちた感じで、そう言いながら俺を見つめる。
 
 これから。
 そう。
俺らはまだ、始まったばかりだから。