『保険の勉強』




今まさに俺に降りかかる不幸。

御幸先輩と二人きりのこの空間。

なんでだ!?

倉持先輩は風呂?
増子先輩は?

なんにせよ、この部屋に俺しかいないのは、さほど不自然ではない。

珍しいのはこいつの方だ。
「な…にしに来て…っ」
なんとなく御幸先輩に合わせて立ち上がると、御幸先輩は俺の目の前で気持ち悪いくらい爽やかに笑って見せる。
「いやぁ、よく金丸に勉強教えて貰ってるらしいから?
俺も先輩として、かわいい後輩のために一肌脱ごうと」

優しさ?
いや、なんか裏があるだろう?
「いえ、結構です」
「まあそう言わず」
聞く耳あんのか?

ジリジリと詰め寄られ、なんとなく後退り。
「おわっ!?」
後ろの壁にぶつかる。
どんだけ後退りしてんだ、俺。

顔をあげるとさっきとは違う企むような笑み。
この人切れると怖ぇし。
「な…なにを教えてくれるんでしょう……っ」
「へ? …なにお前、危機感ねぇの?
…まぁいいや。じゃ、保健体育で」
そういうと、いきなり俺の足の付け根、股間のモノをジャージの上から掴みだす。

「どわっ!? なんなんすか! 青道じゃキャッチャーがピッチャーのバットをミットで…っ!」
「何言ってんだ、お前。……あぁ、ノリもよくマウンドで触られてたっけ。
そうそう。それ。
キャッチャーがピッチャーのバットをミットでね。
でも最終的には、俺がお前に入れるから」

混乱して御幸先輩の言葉、理解出来ないんすけど。

つーか、そんなとこ掴んで、揉まれたらおかしくなるだろ。
ほら。
硬くなったりしたら……って意識しないようにしたいのに、一度考え出したらなんかもうヤバいかも。

いや、これは決してエロい行為ではなく、キャッチャーがピッチャーのバットをミットに…ってこれはなんなんだ。

考えこんでるといきなり口を塞ぐなにか。
なにかって、御幸先輩!?
ちょ、マジで、なんでチューとかしてんすか。
「んっ…んーっ!!」
これは押しのける…べきか否か。
いや、さすがに。
でもキれられたら…っ。

なんか入って…。
舌か、舌ですね!?
俺の舌に当たるんですけど。
てか絡まるから。

なんだこれ。
例えるなら、そう……って例えらんねぇし。

あぁ…気持ち悪…あれ、いい…?
気持ちいいのか、これ。

頭がボーっとして、ゾクゾクして、御幸先輩に捕まれた股間が熱くて…。
って、俺、ソコ熱くしてんの、やばいよな。

でもなんか。
御幸先輩の舌、気持ちいい。
口が深く重なると、さっきよりもたっぷり舌が絡まって。

俺、酸欠でぼーっとしてんの?
御幸先輩、ちゃんと口重ね直してくれる。
その隙に口からも酸素補給しろって?

「っはぁっ…っん…」
よし、上手く吸えた……じゃねぇ!
なに飲み込まれてんだ。

ズボン越しに俺のを撫でてた御幸先輩の手が、俺のジャージと下着の中に入り込んでいく。

いや、直に触る気ですかっ!?
「ちょっ…待っっ」
さすがに御幸先輩の肩に手を置いて、その体を押し退けて。

けど、あんま意味ないし。
キスからは解放されたけど、御幸先輩は、直接、俺のを掴みにかかる。

「うぁあっ…」
「もっと色気のある声出せって」
御幸先輩はにやにやしながら、空いてる手で俺のジャージと下着を下ろすもんだから、なんていうか丸見え。

俺自身、見えてなかった事実をつきつけられたみたいな。
ほら。御幸先輩が俺の握ってるんすけど。

「なっ…に…! つまりセクハラ!?」
「どうだろう」
どうだろうって!?
御幸先輩は相変わらず企むような笑みで。
ゆっくりと上下に擦りあげていく。

「んっ……ぅんっ…ンっ!」
「沢村ー…いつ抜いてんの?」
なんなんだ、この人!
そんなん答える余裕ないし。

人の手でこんなこと…。
やばい、気持ちいいし。
「はぁ…っ…んっ…あっ」
「沢村、腰動いてきた」
「なっ…!? ばっか…っ」
「先輩に馬鹿はないだろ。
いやらしいのは沢村なんだし」
「んっ…あっ…セクハラだっ…」
「なんで? 嫌がってなきゃセクハラになんねーよ」
そう言うと、少し強めに扱きだす。
「あっ! ンっ…やっ…んぅんっ」
「嫌がってんの? お前。
こんだけ先走りの液垂らしてさ。
俺の手まで滴ってんの。見る?」
御幸先輩は反対の手に持ち変えて、緩やかに刺激し続けながらも、さっきまで俺のを扱ってた手を俺の前に差し出す。

なんかヌラヌラしてて。
たっぷり濡れてます、その指先。
「やめ…っん…やらしいっ」
俺は視界に入らないよう顔を反らす。
「やらしいのはお前だろ?
お前が出してんの」
なにか言い返すか?
どう言えばいいのかわからない。

とりあえず、もう一度向き直ると、さっきの指…に、舌を這わす御幸先輩。
「な…っ、なにして…っ」
「別に?
で。嫌なの? 嫌なら止めるけど?」
そう言いながらも、また利き手で、俺のを掴んだ。
「ひぁっ…んっ!」
指の腹がなにかを催促するよう先を撫でる。
やばい。
ぬるぬるしてる。
俺、またなんか出してるんだ?
「どーすんの? いまから一人で抜いてくんの?」
いまさら一人でなんて。

無理だろ。
馬鹿。
「もう…っ…しろって」
むかつくむかつく。
「俺、先輩なんだけど」
なにそれ。
つまり敬語使えって?

こういうときだけ先輩ぶりやがってっ!
いや、いつもか?

「っ…してください」
「わー、めちゃくちゃ嫌そうだし。
まあいいか。特別な」

もう一度。
さっきみたいに強く擦りあげてくれる。
「あっ…んっ…ぅンっ…」
中途半端にじらされたせいか、もの凄く感じる。
「はぁっ…あっ…ぁあっ…」
「だんだんやらしい声出るようになってんのな。…イきそうなんだ…?」
耳元で俺を苛める声。
その息遣いが少し荒いように感じるんだけど。
この人、俺で興奮してるとか。
そう考えたらなんかもう、俺だっておかしくなる。

「ぅンっ…あ…もぉっ…んっ…あっ…んーーっ!!」



御幸先輩の手で。
イかされた。

もちろん気持ちよかったけど、気持ちの整理つかないっていうか。


「なんなんだよ…」
「保健体育の勉強な」
「馬鹿。こんくらい知って…っ」
意味わかんねぇ。
「もちろん、これで終わりじゃないのも解ってるよな。
自分一人だけ気持ちよくなって終わろうだなんて、考えてないだろ」

…続くんですか。
「いや、もう倉持先輩とかっ」
いなければいいわけでもないけど!
「あぁ、二人なら俺の部屋で寝てるし」
計画的犯罪!?


いままさに俺に降りかかる不幸は、まだまだ終わりそうにない。