『放つ光に照らされて』




「染岡くん。聞いたよ。検査、無事終わってなんともなかったって」  

 エイリア石の影響を受けた俺はここ数日、病院で検査を受けていた。
 医者の方から監督に連絡でもいったか。
吹雪がわざわざ病院まで見舞いに来てくれる。
「まあ大したことねぇよ。っつーか病気じゃねぇし」
 以前、不動にスライディングされ負傷したときも吹雪は面接に来てくれていた。
 だが、今回はただの検査だ。
 なんてことねぇのに。
「目に見える怪我とは違うから、余計心配なんだよ」
 吹雪はそう俺を見上げてくれる。
「……まあ……なんだその……サンキュ」
 しょうがなく礼を言い少し視線を逸らした直後だ。
 腕を取られる感触に視線を戻す。

「よかった」
 そのまま、体を寄せられるもんだから、つい吹雪の肩を掴んで引き離す。
「染岡くん?」
「いや、ここ病院の廊下だし」
「くっつくくらい、普通にするでしょ?」
「そうかもしんねぇけどっ。お前、普段そういうことしねぇし」
「……これが他の子だったら、普通に抱かれてた?」
「抱かれてたっつーか」
 例えばだけれど、シュートを決めたときに抱き合ったりとか、そういうことはある。
 けれど、なんでもないときにってのは。
「特に意識はしねぇけど、なんつーか」
「僕は、意識する?」
「お前がっつーか、病院でってのがっ」
 なんだか恥ずかしくなり、慌てて病院であることを伝えるが、やっぱり俺、意識してるんだろうか、吹雪のこと。
 だから、こんな風に少し体を寄せられるだけで気になったり。

「顔、赤い」
「違ぇよ」
「違わないよ。……トイレ行く?」
「ちょ、なんでトイレなんだって」
「だって、病室みんないるでしょ。屋上も誰かいそうだし。少し離れたトイレならあまり人来ないよ、たぶん」
「だから、行ってどうすんだって」
 なんとなく予想できてしまう。
 みんながいないトイレにって。
 自分でもたぶん顔が赤くなっているだろうと思った。
 熱い。
 答え、聞かないうちに戻った方がいいか?
「っそろそろ病室に……っ」
「染岡くん。心配したんだ。少しくらい2人きりで話させてよ」
「話……おま、トイレで話すのかよ」
「少しはくっつくかも」
 少し?
 つい目を向けると、吹雪が笑った。
「だって、少し寄っただけでも、染岡くん人目気にするでしょ。キスも出来ないじゃない」
「っ……絶対、そういうのは人前でしないからな」
「そういうのって、キスとか? ……わかってる。だからね」
 本当に、俺のこと心配してくれていたんだろうし。

 しょうがなく軽く頷くと俺の手を引っ張って、トイレの方へと向かう。
「場所、わかんのか」
「ここ来るまでに、通ってきたから」
「そうか」
 大した会話も続かない。
 まるでキスをするためにトイレに向かうようで、恥ずかしい。
 いや、実際にそうなんだけれど。

「誰もいないみたいだね。いい?」
 いきなりすぎだろ。
「っ……誰か来るかもしんねぇしっ」
「じゃあ、個室入ろうか」
 個室に入って人が来ちまった場合、そいつが出て行くまで出られなくなっちまうけれど。
 ここでして、急に来た奴に見られても困るしな。

 病院のトイレは、個室も少し広めに作られていた。
 2人で入ってもそこまで狭苦しいという感じではない。
 けれどもやっぱりそれなりには密着してしまう。
 逃げ場もなく、俺はドアを背もたれに。
 吹雪の口が近づく。
「っちょ、吹雪」
「なに。心の準備がいるとか?」
 そう言われて、待ってもらっても困るんだけど。
「いい?」
 ここで頷かないでいて、俺から行くことも出来そうにないし。
 なんとか頷くと、吹雪の手が俺の頬を取る。

 そっと重なる唇。
 顔が熱くなった。
 口が離れほっとし、息を吐いたときだ。
 もう一度、思いがけず口を重ねられ、体がビクついた。
「んっ……!」
 開いてしまっていた口から、吹雪の舌が入り込む。
 こういうキスは初めてだ。
 舌が、俺の舌の上をなぞって、下からすくって、絡まっていく。
 濡れた音が頭の中に響いて恥ずかしくなり、吹雪の肩に手を置いた。
 引き剥がそうとするんだが、腕に力が入らない。
「染岡く……もっと、舌出して」
 少し口を離してそう言う吹雪の声が、なんだかいやらしく聞こえた。
 反論する間もなく、もう一度口が重なる。
「んっ…ん…っ」
 吹雪の言葉に従うつもりは無かったのだが、逃げようと舌を動かすと余計に絡まって、それが気持ちよく感じてしまっていた。
 舌を吸い上げられ、頭がボーっとする。
 抵抗しなければいけないのかもよくわからないし。
 
 俺は吹雪を好きで。
 吹雪も俺を好きで。
 拒む理由はない。
 そう思うと、素直に受け入れることが出来た。
「んっ……」
 何度も口を重ねなおした。
 熱くてたまらなくて。
 なにか夢中になっていた。
 そっと口先が離れると、名残惜しい気さえした。

「っ…はぁ……」
 なんとか息を整えていると、吹雪が不意に俺の太ももを撫で、探るように股間のモノに触れてくる。
「っ……吹雪っ! なにしてっ」
「……染岡くんの、硬くなってるね」
「違っ……! これは、その溜まってて」
「病院じゃ抜きにくい? いいよ。手伝ってあげる」
「いいよじゃねーよっ」
 そうは言っても、吹雪はズボンの上から何度も俺のを揉みしだく。
「んっ……吹雪っ」
「……直接、していい?」
「だからっ」
「駄目?」
 駄目に決まってる。
 そう言いたいのに、駄目な理由がいまいち思い浮かばない。

「……自分でするから」
「させてよ」
「なんでだよ」
「したい」
「人にされても、緊張してイけねぇよ」
「じゃあ、ちょっと試してみて、駄目だったら諦めるよ」
 言い返せずにいると、ズボンと下着を引き摺り下ろされる。
「おいっ」
「これが、染岡くんの……」
「っジロジロ見んなって」
「じゃあ、するね?」
 吹雪の手が俺のを掴んで、ゆっくりと擦り上げていく。
「んぅっ! んっ」
「痛くない? 強すぎないかな」
 人にされても緊張してイけねぇよ。
 さっき言った自分の言葉が頭の中に浮かんだ。
 あんなこと言ったくせに、今、すっげぇ気持ちよくてたまらない。
 自分でするよりも感じているのが分かった。
「ぁ……っ吹雪……っ」
 蓋をした便器に吹雪が腰掛け、間近でソレを見られてしまう。
 俺ですら、そんなに近くで見てねぇのに。
「近ぇよっ……ンっ」
「うん……ね、透明の出てきた」
「うるさっ…ぁっ」
 まるでその液を確かめるみたく、先端を空いている指先で撫でられる。
「ひぁっ……んっ!!」
 慌てて口を塞ぐが、俺の反応に気付きそっと見上げる吹雪と目が合った。
「ココ撫でられるの好き? いつもココも弄ってるの?」
 答えずにいると、試すみたく何度もぐりぐりと先端を指先で弄られる。
「んぅっ! くっ…ンっ!」
「あ……溢れてきて……いいんだね、染岡くん」
 いい。
 塗りたくされて、ぬるぬるして。
 あまりの気持ちよさに腰が浮く。
「んっ……ぅンっ!」
「……染岡くんのこと……好きだよ」
 急に何を言い出したのかと思い目を向けると、吹雪の舌先が俺の先端を舐めあげるのが視界に入った。
「ぁっあっ……なにしてっ!!」
 慌てて吹雪の髪を掴み引き剥がそうと試みる。
 が、それに反発する形で吹雪は咥え込んでしまう。
「んっ! 吹雪っ」
 吹雪の口ん中はすごく熱くて。
 舌と口内の粘膜が絡みつく。
 自然と腰が動くのを止められなくなっていた。
 吹雪の口ん中、出し入れしている自分がいて、そんな風にしてしまう自分が恥ずかしくてたまらない。
「吹雪……あっ…ん、離しっ」
「……どうして?」
 咥え込んだままそう聞き取れるように言われるとまたその感触に体がビクついた。
「ぅあっ……ん、しゃべんなっ……ぁっ……」
 先の方だけ咥え込んだまま、目を向けられる。
 その視線から逃れるよう顔を背けた。
 手で竿を擦り上げられ、根元の袋までもやんわりと揉まれると、我慢が出来なくなってくる。
「はぁっ……いくっ……離しっ……吹雪っっ」
 言いたくはないが、しょうがなくいきそうだと伝えているのに、吹雪は離してくれそうにない。
 やなことに俺自身も腰が止められないし、気持ちよくてたまらなかった。
「あっ……もう、出る…っんっ、ぁあっん、んぅんーーーっ!!!」
 我慢出来ず、イってしまい、あまりの気持ちよさに頭がボーっとした。
「んっ…う…」
吸い上げられる感触がして、吹雪の口の中だったということを思い出す。
「ぁっ…吹雪っ……」
「ん……ぅん……」
 慌てて、吹雪の頭を掴んで引き剥がした。
「っんぅっ! ……ん、はぁ……染岡くん、急にされたら」
 急に引き剥がしたせいで、吹雪の顔に俺の残った液がかかってしまう。
「あ……っ悪ぃっそのっ」
「ん……たくさん出たね。半分くらいしか飲めなかった」
「っ……飲んだのかよっ」
「平気だよ。染岡くんのこと好きだから」
 そうにっこり笑われても、こっちは平気じゃない。
「っいいからもう、顔拭くぞ」
「優しいね。染岡くん」
 ああもう、いい加減にしてくれ。

「イけたね。僕で」
「……まあ」
「だから、これからも染岡くんがしたいときは僕がしてもいいよね?」
「っなんでだよ」
「したいから」
 恥ずかしいから嫌だというのも恥ずかしい。
「っ……たまになら」
「うん。ありがとう。ところで、僕も勃っちゃった」
「っ知るかよっ!!」
「酷いなあ。染岡くんのせいなのに」
 俺見て、勃ったのかよ。
 ……俺も、吹雪とキスして勃っちまったけど。
 こんだけされて、自分でしろよとも言いづらいし。
「あーもう……っ。いるなら……右手くらい貸してやっても」
「……いいの?」
 そう聞きながらももう、俺の右手取ってるし。
「お前みたいに上手く出来るかわかんねぇからな」
「……僕、上手かった?」
 余計なこと言っちまった。
 目がキラキラしてやがる。

「……知らねぇよ」
「でもこんだけ、たくさん出ちゃったってことはよかったんだよね」
「わかってんなら、聞いてんじゃねぇよ!」
 
 ああもう、恥ずかしいことばっかり言いやがって。
 どうしてこうなっちまったんかな。

 まあ答えはわかってんだけど。
 たぶん、好きだからなんだろう。